脳を外部から調べる方法
- EEG
EEG(Electroencephalogram = 脳伝図)は、脳の表面的な変化を図にしたものである。 複雑な工事の機能を受け持つ「大脳新皮質」は、脳の外側の層に位置するきわめて薄い細胞の「シート」なのでこの方法で各ニューロンの様子を観察できる。 電極は小さな金属の円盤でゲル状の薬剤で頭部に固定する。電極の数は2個程度の場合もあれば、100個くらい使用することもあり、そのすべてで同時に電磁波の測定を行う。 空間分解能が低いため、取り付けた電極の数以上に細かく脳を分解するくとはできない。頭皮では性格に電気信号の発生源を特定することはできない。よって、脳全体の活動、直径1センチ以上の範囲の活動について調べる際に使うべきである。 時間分解能が高く、刺激に対しての脳がどうのような反応をしたかを正確に記録できる。 OpenEEGのように、家庭でも使えるキットを作れる。
- PET
・PET(Positron Emission Tomography = 陽電子放射断層撮影法)は、ほかに比べて、被験者の体への影響が大きい映像化技術である。放射性の薬剤を血管に注入し、外部から特殊なカメラで撮影し、放射線の分布を調べる。 ニューロンが他のニューロンに信号を送ると、エネルギーの代謝が盛んになる。すると、まもなく、エネルギー代謝が盛んになった部分に新鮮な血液が送られ、酸素とブドウ糖が供給される。放射性の薬剤を使うと、脳の各部分の血液量を知ることができる。そのため、立体的に脳の活動を見ることができる。 脳の活動状態の変化を見ることはできない。また、十分に精細とはいえない。ほかの映像化技術のほうがもっと解像度が高いものがある。
- fMRI
・fMRI(Function Magnetic Resonance Imagine = 機能的磁気共鳴影像法)は、現在のところ、脳の映像化技術の中でももっと有力なものである。MRI(Magentic Resonance Imagine = 磁気共鳴影像法)で画像を作成する際、被験者は強い磁場を発生する大きな機械の中に横になる。強い磁場をかけると、脳内の水素原子はすべて「整列」し、同一の周波数で回転し始める。そこに同じ周波数の電磁波のパルスを加えると、水素原子を含む分子が共鳴し、電磁波が放出される(その際、エネルギーが失われ分子は通常の状態に戻る)。 放出されうる電磁波がどのようになるかは、分子の属する組織によって異なる。この電磁気についてのデータを記録すれば、それを基に3D画像を作成し、脳の内部の様子を詳しく知ることができる。MRIを応用したBOLD(Blood Oxygen Level Dependent = 血中酸素レベル依存)fMRIという技術が心理学に利用されうるようになったのはごく最近である。血液中のヘモグロビンの量が減少すると、磁化されやすくなる(血液中に含まれる酸化鉄が鉄に変わるため)が、BOLD fMRIではこれを利用している。MRIでは、血液中のヘモグロビン量の多い新鮮な血液が多く供給されるため、活発な部位ではMRIでは、画像作成にかなりの時間を要するが、fMRIでは、脳全体を捉えた画像を作成するのに数秒でできる。また、画像の解像度はPETよりも高い。脳全体を直径2mm程度の範囲に区切って、各範囲の活動を調べることも可能だ。一枚の画像で各範囲の活動の様子を同時に見ることもできる。fMRIで作った画像からアニメーションを作り、MRIの高解像度の画像と併せてみることで、脳のどの部位がどのように活動しているかをより正確に知ることができる。空間分解能が高く、時間分解能も高いので脳の状態がどのように変異したかを知るのに使える。EEGほど簡単には扱えないが空間分解能ではEEGをはるかにしのいでいる。「何かを思い出す」、「人の顔を見る」など、特定の行動をとった際に脳のどの部位がどのように機能するかといったことを知るのに有効。
- TMS
・TMS(Transcranial Magnetic Stimulation = 経頭蓋磁気刺激)は、磁気パルス(振動磁気)を使用して、脳内の電気的活動の誘発あるいは抑制を行う、という技術である。それ自体は映像技術ではなく、EEGやfMRIと組み合わせて使用すると有効、というものだ。大掛かりな機械は必要なく、頭に取り付けられるくらいの小さな装置だけで済む。 ニューロンは電気パルスを使って互いに情報を伝達し合うため、電気的活動を操作してやることで人工的に情報の伝達を行わせることもできる。視野野の中の特定の領域の電気的活動を活性化、あるいは抑制してやると、幻覚が起こったり、視野の一部が失われたりする、といったことがわかっている。こうした実験は、脳の各部位がそれぞれどのような役割をはたしているかを調べるのに役立つ。たとえば、ある部位を操作したときに被験者の筋肉が痙攣したら、その部位はおそらく運動を制御する役割を持っていると推測できる。視野系のさまざまな地点で幻覚を起こさせることで、我々が物を見る際にどのような処理がどのような順序で行われているか確かめる、ということも可能である。特定の部位の機能を抑制してやれば、物の動きを認知するはたらきをしているのはどの部位か、といったことも調べられる。機能を抑制した時に被験者が物の動きを認知できなくなる部位を探せばよいのである。以前は、脳の一部を損傷した人に協力してもらう以外、この種のことを知る方法はなかった。現在では、TMSを使うことでより体系立ったかたちで同様の研究ができる。 映像化技術とTMSを組み合わせれば、磁気パルスへの反応がさまざまな部位にさざ波のおように広がっている様子を観察することがもできる。それにより脳の構造を知ることもできる。
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